【2025年最新】RFIDタグとは?在庫管理に役立つ仕組み・種類・メリットをわかりやすく解説

在庫数は合っているはずなのに棚に商品がない、棚卸しに人手と時間がかかりすぎる――。物流・製造・小売などの現場では、こうした在庫管理の課題から、RFIDタグの導入を検討する企業が増えています。RFIDは、タグに記録したIDコードや商品情報を非接触で一括読み取りできる自動認識技術です。箱の中や目視できない位置にある荷物も読み取れるため、在庫管理や棚卸しの効率化に役立ちます。 本記事では、RFIDタグ・リーダライタ・処理システムといった基本構成から、LF/HF/UHFといった周波数帯別の特徴、パッシブタグ/アクティブタグなどタグの種類と用途まで、RFIDの仕組みをわかりやすく整理します。「棚卸しに時間がかかる」「在庫数がシステムと合わない」「どこに何があるのか把握しづらい」といった現場課題を念頭に、バーコードやQRコードでは難しい複数タグの一括読取など、RFIDならではのメリットと具体的な活用イメージを解説します。

RFIDとは

RFID(Radio Frequency Identification)とは、個々のものが持つ専用タグに記憶された個々のデータ(IDコード、名称など)を非接触の無線通信技術でリーダライタを通して処理システムとやり取りする自動認識技術です。

少し難しく聞こえますが、イメージとしては「目に見えないバーコードラベル」を物品に付けておき、近くを通ったときにまとめて情報を読み取れる仕組みだと考えるとわかりやすいでしょう。

RFIDタグの使用例。眼鏡の値札に取り付け

よく使われるRFIDの活用例

例えば、倉庫の入出荷検品、店舗での在庫管理、レンタル品や備品の貸出管理、病院や学校での持ち物管理など、「モノの所在を素早く正確に把握したい」場面でRFIDは力を発揮します。

タグに記録される情報には、製品のIDコードのほか、商品名称、価格、製造年月日、有効期限、ロット番号などの多くの情報が含まれます。これにより、物品の管理や追跡が容易になり、業務効率化やエラー削減に大きく貢献します。

RFIDの構成

大まかに言うと、「情報を覚えているRFタグ」「それを読み書きするリーダライタ」「読んだ情報を蓄積・処理するシステム」の三つが連携して動くイメージです。タグが「名札」、リーダライタが「読み取り機」、処理システムが「在庫台帳・管理画面」の役割を担います。

(1) RFタグ(ICタグ、RFIDタグとも呼ばれる)

RFタグは、データを記録するためのICチップと、データの送受信を行うためのアンテナが組み込まれています。このRFタグを商品や荷物に取り付けて、その情報を無線で読み取れるようにできます。RFタグの形状はさまざまで、シール状のもの、カード状のもの、パレットやケースに内蔵するものなどがあります。一部のタグは耐熱性や防水性を備えており、過酷な環境下でも使用可能です。

RFタグには書き換え可能なタイプ(リード/ライト型)と、一度書き込んだデータは変更できないタイプ(リードオンリー型)があり、用途に応じて適切なタイプを選ぶ必要があります。

(2) RFIDリーダライタ

RFIDリーダライタは、RFタグと通信を行うための装置です。タグに電波や磁界を照射し、帰ってくる電波や磁界を受信してデータを読み書きする機能を持っています。リーダライタには、作業者が手に持って読み取るハンディタイプと、特定の場所を通過する際にタグ情報を自動的に収集するゲートタイプがあります。また、固定タイプは、工場の生産ラインや倉庫内の特定エリアでの一括読み取りに適しています。

(3) 処理システム

処理システムは、RFIDリーダライタを通じて収集したデータを分析・管理するためのPC、サーバー上のソフトウェアやデータベースシステムです。収集された情報は、在庫管理、物流追跡、製造工程のモニタリング、商品の真贋判定などの用途で活用されます。

RFIDの仕組みと動作と応用

RFIDでは、人が1件ずつバーコードを読み取る代わりに、タグとリーダライタの間でデータを無線通信し、その情報をシステム側で一括処理できます。これにより、棚卸しや入出庫のような「同じ作業を大量に繰り返す」業務で、作業時間の短縮や人的ミスの削減につながります。 RFタグは個々の物品に取り付けられ、リーダライタと無線でデータをやり取りします。リーダーのアンテナから送信された電波をタグのアンテナが受信し、その電力でタグ内のICチップが起動します。タグは記録されているIDや商品情報を再びアンテナから送信し、リーダーがその信号を受信して、モバイル端末やPCなどのシステムに転送します。この一連の動作は非常に短時間で完了します。イメージとしては、リーダーが一斉に「いる人は返事して」と声をかけ、タグが「はい、ここにいます」と名乗り返すような動きです。 こうしたRFIDの特性により、在庫管理や物流の効率化、入退室管理、医療現場での患者識別、図書館での書籍管理など、さまざまな現場で活用が進んでいます。また、非接触で通信できるため、セルフレジや交通機関などのタッチレス運用にも適しており、感染症対策の面でもメリットがあります。

RFIDの種類

RFIDのRFタグは、要素技術に基づいて分類されます。主な分類基準には、使用する周波数帯、バッテリー搭載有無があります。それぞれのタグの特性や用途、価格が異なるため、使用目的に応じた適切な選択が重要です。

しかし、いざ導入を検討すると、「どのタグを選べばよいのか」「自分たちの用途にはどの方式が合っているのか」が分かりにくいと感じる方も多いのではないでしょうか。そこで以下では、読み取り距離や設置環境、コスト感といった観点から、タグの種類ごとの特徴を整理していきます。

RFIDタグの一例

使用する周波数帯によるタグの分類とその用途

(1) 低周波帯(LF:Low Frequency、30~300kHz)

通信距離は10cm程度と短いですが、金属や水の影響を受けにくく、安定した通信が可能です。通信速度は遅いので、家畜管理や自動車のキーレスエントリーなど、データ量が少なく、近距離の限定された通信が必要な用途に使用されます。

このように、LF帯は「金属や水まわりの環境で、近距離かつ確実に読み取りたい」用途に向いています。

(2) 高周波帯(HF:High Frequency、3~30MHz)

通信距離は数十cm程度で、電子マネーや交通系ICカードに利用されることが多い周波数帯です。ループアンテナを使ったタグは1cm程度の小型で実現ができますので、商品の値札に付けて展示販売、販売管理に適しています。ISO14443やISO15693といった規格に準拠したシステムが広く普及しています。

HF帯は、「人がタグをかざして決済する」「商品タグを近づけて読み取る」といった、日常的なタッチ操作になじみやすい用途で広く利用されている周波数帯です。

(3) 超高周波帯(UHF:Ultra-High Frequency、300MHz~3GHz)

通信距離が数mから数10mと長く、この程度のエリアでの通信が可能です。物流や倉庫管理、製造業での生産ライン追跡など、大量のタグのデータを一括して効率的に処理する用途に最適です。ただし、金属や液体の影響を受けやすいため、運用環境には留意が必要です。

そのため、「倉庫の入出庫でパレットごとに一括読取したい」「生産ラインを流れる製品を自動で追跡したい」といった、広い範囲に分散した多数のタグを効率よく把握したいシーンで検討されることが多い周波数帯です。

(4) マイクロ波帯(Microwave、2.4GHz以上)

通信距離を数10m以上に長くでき、位置情報の管理や特定エリアの監視など、高度なアプリケーションで使用されます。電波の波長が短いので、タグの極小化が図れます。ただし、価格が高くなるため、利用は限定的です。

バッテリー搭載有無によるタグの種類

(1) パッシブタグ(Passive Tag)

パッシブタグはRFIDリーダライタから送信される電波エネルギーを受け取って電源として動作します。タグ自体が軽量で薄型に設計できるため、コストが低く、使い捨ての用途にも適しています。通信距離は比較的短く、数cmから数m程度です。小売業での商品管理や在庫管理、入退室管理など、幅広い用途で使われています。

(2) アクティブタグ(Active Tag)

アクティブタグは、内部にバッテリーを搭載しており、自己のセンサーやタイマーの情報に基づき、必要に応じて自ら信号を送信するタグです。価格はパッシブタグより高いですが、長距離通信が必要な資産管理や物流追跡、セキュリティ監視のような用途に応用できます。ただし、バッテリー寿命を考慮して一定期間ごとの交換が必要です。

(3) セミパッシブタグ(Semi-Passive Tag)

セミパッシブタグは、内部にバッテリーを持つ点ではアクティブタグと同じですが、タグ自体が信号を発信するのではなく、リーダライタからの要求信号を受信して応答する際にバッテリーを使用します。したがって、アクティブタグよりも低コストで通信距離や応答性能の向上が可能です。温度や湿度といった環境データの収集にも適しており、物流や冷蔵管理などの分野で使用されています。

RFIDのメリット(バーコードやQRコードの欠点を解決)

(1) 箱の中で見えないとか、手の届かない物品を読み取れる

RFIDは、電磁波が紙、プラスチック、木材などの材料を通過できるため、箱の中の見えない製品を認識できます。また、手の届かない場所にある物品を認識するのにも適しています。

(2) 複数の物品を一括で読み取れる

RFIDで複数の物品を一括で読み取れるのは、RFタグとRFIDリーダーの間で電波による通信が行われるためです。RFIDリーダーは、電波の届く範囲内にある複数のRFタグからの返信を同時に受信できます。この際、アンチコリジョン(衝突防止)機能で個々の物体が高速にほぼ同時に識別できます。

実務レベルでは、これまで1点ずつバーコードをスキャンしていた作業が、RFID化によって箱ごと・棚ごとに一度で把握できるようになり、「検品に追われる時間が減った」、「在庫差異の原因が追跡しやすくなった」といった効果が期待できます。

(3) 特定のIDデータを持つ物品を探索できる

RFID技術は、対象物を効率的に探索する機能を持ちます。特に、固定リーダライタを活用することで、倉庫や配送センターでの物品の出入り監視において、すべてのRFIDタグを認識し、特定の物品を探索することもできます。

(4) RFタグの持つデータを書き換えられる

データ書き換え可能なRFタグには、EEPROMやフラッシュメモリーなどの不揮発性メモリーが使用されています。これらのメモリーは電源がオフになってもデータが保持されるため、書き換え後のデータが長期にわたり保持されます。したがって、再利用が何度でもでき、使用コストを下げることができます。

RFIDタグで複数商品を読み取るイメージ

RFタグでできることとは(バーコードやQRコードでは不可)

バーコードやQRコード方式のタグは紙やフィルムに印刷するだけで作成できるため、コストが非常に低いことが特徴ですが、複数のタグ情報を一括で読み取ったり、遠隔から読み取ることはできません。バーコードなどの読み取り距離はせいぜい数10cm程度です。また、視覚的な情報を読み取るので箱などの遮蔽物があったり、汚れている場合に読み取りできません。

さらに決定的な違いとして、バーコードの情報は書き換えられませんが、RFタグは使用中に書き換えが可能です。製造、販売、使用の過程で加わった状況を逐次書き込むことで、物品の性質や個性をデータとして持たせることができます。

製造の場では、ある行程で製品に加わった履歴や発生した誤差を書き込んでおけば、次の工程でそれを考慮して補正するようなフレキシブルな製造が可能になります。

RFIDタグ製品の一例

ここまで紹介してきたRFIDの仕組みを、実際の現場で小さく試してみたい場合の例として、当社ストアで取り扱っているHF帯RFIDタグを2種類ご紹介します。いずれも国際標準規格ISO 15693に準拠し、在庫管理や物流管理などで利用しやすい汎用的な仕様のタグです。

小型HF帯RFIDタグ(14mm × 29mm / 15mm × 30mm)

14mm × 29mm・15mm × 30mmの小型長方形タグで、名刺やカードよりも小さいサイズのHF帯RFIDタグ(13.56MHz)です。銅線コイルを採用した高感度タグで、通常1cm程度以下の距離での読み取りを想定しており、商品タグや値札など「個品レベル」での管理に適しています。独自の加工技術によりチップ部の盛り上がりを抑えたスマートなデザインと、PET加工による耐水・耐久性を備えており、再利用を前提とした長期運用にも対応します。

在庫管理・物流管理・入退室管理・セキュリティ・アパレル・医療・製造業・図書館など、幅広い分野での活用を想定したHF帯RFIDタグです。

カードサイズHF帯RFIDタグ(85mm × 54mm)

85mm × 54mm × 1mmの長方形カードサイズHF帯RFIDタグ(13.56MHz)で、アルミニウム素材のコイルを採用した日本製のモデルです。国際標準規格ISO 15693に準拠し、NXP社 I-Code SLIチップを搭載、ユーザエリア112バイトのEEPROMメモリを備えています。パッシブタグのためタグ側で電源を持たず、リーダからの電波で動作します。

最大交信距離は約46cmで、白色のカード形状という取り扱いやすい外観を持ち、在庫管理・物流管理・入退室管理・セキュリティ・医療・製造業・図書館・イベントなど、多様な用途での利用を想定した仕様になっています。環境への配慮やリサイクル性を意識したアルミニウムコイル採用のHF帯RFIDタグです。

まとめ:自社に合ったRFID活用の第一歩

RFIDは、目に見えないタグ情報を一括で読み取り、物品の履歴や個体情報をきめ細かく管理できる技術です。バーコードやQRコードだけでは難しかった「見えない場所の把握」や「複数品目の同時読取」を実現し、業務の効率化やトレーサビリティ向上に役立ちます。

導入を検討する際は、「どれくらいの距離から読み取りたいか」「どのような環境で使うか」「どこまで個別に履歴を持たせたいか」といった条件を整理し、周波数帯やタグの種類、システム構成を選んでいくことが重要です。まずは小さなエリアや特定工程から試験導入し、自社の業務に合った使い方を検証していくことがスムーズな導入の第一歩となります。

関連記事①: [事例] RFID (IC タグ) を使用した腕時計の商品管理

関連記事②: [事例] RFID (IC タグ) を使用した流通業の物流管理システム

よくあるご質問(RFIDタグ)

RFIDタグや在庫管理での活用について、よくあるご質問をまとめました。 詳細は以下のFAQをご覧ください。

RFID(Radio Frequency Identification)とは、個々の物品に専用のタグを取り付けて、タグに記録されたIDコードや名称などのデータを、非接触の無線通信で読み書きできる自動認識技術です。目に見えるバーコードラベルの代わりに「目に見えない名札」を付けておき、リーダライタを近づけるだけで複数の情報をまとめて読み取れるイメージです。

バーコードやQRコードは、印刷されたパターンを1点ずつスキャンする方式で、基本的に目視できる位置にあり、汚れや箱などの遮蔽物がないことが前提になります。一方、RFIDタグは電波による通信のため、紙やプラスチック、段ボールなどの素材越しでも読み取りができ、箱の中や手の届きにくい場所にある物品も認識できます。また、RFIDはリーダの電波が届く範囲にある複数のタグを一括で読み取れることや、タグ内のメモリに記録したデータを書き換えられる点も大きな違いです。

読み取り距離は、使用する周波数帯(LF/HF/UHFなど)やリーダライタの出力、アンテナ形状、設置環境によって大きく変わります。一般的には、低周波帯(LF)は10cm程度、高周波帯(HF)は数cm〜数十cm、超高周波帯(UHF)は数m〜数10mの通信距離が目安です。本記事で紹介しているHF帯の小型タグは通常1cm程度以下の距離での読み取りを想定しており、カードサイズのHF帯タグは最大交信距離約46cmとなっています。

金属や水は電波を反射・吸収しやすいため、特にUHF帯では読み取り性能に影響が出やすい点に注意が必要です。一方、LF帯は金属や水の影響を受けにくく、近距離で確実に読み取りたい用途に適しています。実際の導入では、「どの周波数帯を使うか」「タグやリーダアンテナをどこに設置するか」を運用環境に合わせて検討することが重要です。金属棚の多い倉庫や液体を扱う現場では、タグの取り付け位置や読取方向を工夫したり、金属対応タグを選定することで安定した運用がしやすくなります。

いきなり現場全体をRFID化するのではなく、「どれくらいの距離から読み取りたいか」「どのような環境で使うか」「どこまで個別に履歴を持たせたいか」といった条件を整理し、小さなエリアや特定工程から試験導入するのがおすすめです。HF帯の小型タグやカードサイズタグを使って、特定棚の在庫管理や貸出・返却管理など比較的範囲が限定された業務から試してみると、RFIDのメリットや現場との相性を把握しやすくなります。

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