水耕栽培での水質メーターの使い方

植物工場などの水耕栽培では、植物の栄養吸収に関係する養液のpHと成長に関係する肥料の濃度の管理が重要になります。

この目的のために、pHメーター、ECメーター、DOメーターが活用できます。

1. pHメーター

養液のpH(水素イオン濃度)は、植物の栄養吸収効率に影響を及ぼすため、植物の種類や、成長の時期で最適な状態にする必要があり、測定が必要になります。

■一般的なpHメーターの使い方

おおまかに以下の作業を実行します。

  1. 校正:使用前に、pHが分かっている標準校正液を使って3ポイント校正をします。
  2. 測定:電源を入れ、養液に電極を浸します。
  3. 読み取り:数値が安定したら記録します。
  4. 洗浄と保管: 測定後は脱イオン水や純水で電極を洗い、保護キャップをして保管します。

読みとった値に対して、目標のpH値に近づくように調整します。

目標より高い場合は、リン酸や硝酸が主成分のpHダウン剤を徐々に添加、攪拌し、再測定しながら目標に近づけます。

目標より低い場合は、水酸化カリウムなどが主成分のpHアップ剤を添加、攪拌し、同様にして目標に近づけます。

多くの植物は、pH5.5〜6.5の弱酸性が理想的ですが、代表的な作物の最適値を下表に示します。

作物のカテゴリー代表的な作物最適なpH値
葉菜レタス、シュンギク5.5 〜 6.5
葉菜(好中性)ホウレンソウ6.0 〜 7.0
果菜トマト、ミニトマト5.5 〜 6.5
果菜キュウリ5.5 〜 6.0
果菜ピーマン、パプリカ5.5 〜 6.8
果物イチゴ5.5 〜 6.2
果物(好酸性)ブルーベリー4.0 〜 5.0
ハーブバジル、ミント5.5 〜 6.5

2. ECメーター(肥料濃度の測定)

導電率(EC:Electrical Conductivity)は、溶液中の肥料成分などのイオンの量に比例するため、値が大きいほど肥料が多く溶けていることを表します。

このため、養液に溶けている肥料の濃さの判断に利用します。

■一般的なECメーターの使い方

おおまかに以下の作業を実行します。

  1. 校正:セル定数*1を使用する電極の合わせ、通常1413μS/cmの標準校正液を使用して25℃の恒温槽の中で1ポイント校正をします。
  2. 測定: 電源を入れ、電極を養液に浸します。
  3. 読み取り:数値が安定したら記録します。
  4. 洗浄と保管: 測定後は脱イオン水や純水で電極を洗い、保護キャップをして保管します。

読みとった値に対して、目標のEC値に近づくように調整します。

目標より高い場合は、水道水で少しずつ薄め、攪拌し、再測定しながら目標に近づけます。

目標より低い場合は、肥料を溶かした少量の濃縮液を作り、これを少しずつ養液に加え、攪拌し、再測定しながら目標に近づけます。

多くの作物は、苗の段階では、あまり肥料を必要とせず、成長が進み開花、結実の段階では、多くの肥料が必要になります。

気温が高い時期は、植物の蒸散が活発になり水分が減るため、肥料の濃度が上がります。

EC値が1.0〜1.5mS/cmを超える場合は、濃度障害のリスクが高まるため、水道水で薄めるなどの対策が必要です。

種類や成長段階により異なりますが、代表的な作物の最適値を下表に示します。

作物のカテゴリー代表的な作物苗期、初期生育期の
最適EC値(mS/cm)
生育期、開花結実期の
最適EC値(mS/cm)
葉菜レタス0.4 〜 0.81.2 〜 1.8
葉菜ホウレンソウ1.0 〜 1.51.8 〜 2.3
果菜トマト、ミニトマト1.0 〜 1.52.5 〜 5.0
果菜キュウリ1.0 〜 1.51.7 〜 2.5
果菜ピーマン、パプリカ0.8 〜 1.82.5 〜 3.5
果物イチゴ1.0 〜 1.42.0 〜 2.4
ハーブバジル0.8 〜 1.21.0 〜 1.6

*1セル定数:電極面積と電極間距離によって決まる定数で、測定された電流値に掛けて、溶液の真のEC値を算出するために用います。

3. DO(溶存酸素)メーター

植物の「根の呼吸」を支える溶存酸素は、生育スピード、病害抵抗性などに影響を及ぼします。

十分な酸素がある環境では、根の分岐が促進され根量が増加し、養分の吸収速度が向上しますが、不足すると根腐れやトマトなどの尻腐れの原因になります。

一般的なDOメーターの使い方

  1. 分極処理:電極を洗浄、乾燥後に、電解液を入れたキャップをして1時間程度通電します。
  2. ゼロ酸素校正:電極を脱酸素溶液に浸します。
  3. 飽和酸素校正:よく振って酸素を飽和させた水に浸します。
  4. 測定・読取り:養液に浸して測定し、数値が安定したら記録します。
  5. 洗浄と保管:測定後は脱イオン水や純水で電極を洗い、保護キャップをして保管します。

読みとった値が目標のDO値より低い場合は以下の調整をします。

  1. エアレーション:エアポンプで空気を送り、エアストーンで微細な泡にして養液に酸素を溶け込ませます。
  2. マイクロ・ナノバブル:気泡が長くとどまる微細な気泡を発生させる装置を使用し、飽和濃度以上の酸素濃度を維持させます。
  3. 酸素注入: 酸素ボンベから酸素を供給し、大規模に高濃度の酸素を迅速に確保します。
  4. 水流:ポンプで養液を循環させたり、滝を作ることで、接触する空気を取り込みます。

水耕栽培におけるDOの最適値は、一般的に4〜8 mg/L (ppm) とされています。

なお、2〜3 mg/L 以下になると根の機能低下や生育障害が発生します。

作物のカテゴリー代表的な作物最適なDO値(mg/L)
果菜トマト、キュウリ、メロン、
ピーマン
5〜8
開花・結実期に要求量が増加。トマトでは2mg/Lを下回ると尻腐れのリスクが高まる。
葉菜レタス、ホウレンソウ、
チンゲンサイ
4~6
8.5mg/Lの高濃度で品質や収量が向上した例もある。
その他イチゴ、セロリ6~8
収量に大きく影響する。

4. 弊社の製品の特長

現場で使用するのに便利な防水、内蔵充電池式のポータブルタイプのpHメーター、ECメーター、DOメーターと、大型カラーディスプレイと多機能電極ホルダーで使い易い卓上型のpHメーター、ECメーターをラインアップしています。

ポータブルpHメーター(pH・mV・温度計/ロガー) BS-WC-PH310F

  • IP65の防水防塵性能を持っています。
  • 温度、ORP(酸化還元電位)も測定できます。
  • 500セットの信頼性が保証されるGLP(優良試験所基準)準拠のデータを保存できます。
  • 専用アプリによりPCに接続して設定、管理ができます。
ポータブルpHメーターBS-WC-PH310F付属品付き

卓上pHメーター(pH・mV・温度計/ロガー) BS-WC-PH300F

  • 7.0インチ大型カラーディスプレイを搭載しています。
  • 多機能電極ホルダーが付属しているため、測定が楽になります。
  • 温度、ORP(酸化還元電位)も測定できます。
  • 500セットの信頼性が保証されるGLP(優良試験所基準)準拠のデータを保存できます。
  • 専用アプリによりPCに接続して設定、管理ができます。
卓上pHメーター(pH・ORP・温度計/ロガー)BS-WC-PH300F

ポータブルECメーター(導電率・抵抗率・TDS・塩分濃度・温度計/ロガー) BS-WC-EC310F

  • IP65の防水防塵性能を持っています。
  • 温度、抵抗率、TDS(溶解イオン物質総量)も測定できます。
  • 500セットの信頼性が保証されるGLP(優良試験所基準)準拠のデータを保存できます。
  • 専用アプリによりPCに接続して設定、管理ができます。
ポータブルECメーターBS-WC-EC310F正面

卓上ECメーター(導電率・抵抗率・TDS・塩分濃度・温度計/ロガー) BS-WC-EC300F

  • 7.0インチ大型カラーディスプレイを搭載しています。
  • 多機能電極ホルダーが付属しているため、測定が楽になります。
  • 温度、抵抗率、TDS(溶解イオン物質総量)も測定できます。
  • 500セットの信頼性が保証されるGLP(優良試験所基準)準拠のデータを保存できます。
  • 専用アプリによりPCに接続して設定、管理ができます
卓上ECメーター(導電率・抵抗・TDS・塩分濃度・温度計/ロガー)BS-EC300F

ポータブルDOメーター(溶存酸素・溶存酸素飽和度・温度計/ロガー) BS-WC-DO310F

  • IP65の防水防塵性能を持っています。
  • 温度、溶存酸素飽和率も測定できます。
  • 500セットの信頼性が保証されるGLP(優良試験所基準)準拠のデータを保存できます。
  • 専用アプリによりPCに接続して設定、管理ができます。
ポータブルDOメーターBS-WC-DO310Fセット